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秘仏の扉/永井紗耶子

2025年11月11日(火)

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秘仏の扉/永井紗耶子

 世界最古の木造建築として、日本初の世界遺産に登録された奈良の「法隆寺」。その建造物や宝物の多くが、国宝や重要文化財に指定されている。なかでも飛鳥時代に聖徳太子の姿を模して造られたといわれる「救世観音像」は、「夢殿」に収められ、「秘仏の扉を開けば直ちに仏罰が下る」と封じられてきた。しかし、廃仏毀釈の嵐が吹き荒れた明治時代、千年の畏れを超え、その価値を世界に知らしめるため、秘仏の固く閉ざされてきた厨子を開いた、「金のために秘仏を見せるというのか」、「支援がなければ法隆寺はもう保てません」、これに関わった男たちの葛藤と矜持を描いた歴史小説である。

 秘仏開帳に関わった6人の男たち、写真家・小川一眞、宮内省図書頭・九鬼隆一、法隆寺住職・千早定朝、そしてアーネスト・フェノロサと岡倉天心、東京国立博物館初代館長・町田久成。秘仏開帳前と開帳後の6人の人生の交差が人間臭く奥行きのある物語に描かれている。



永井紗耶子/文芸春秋

1,760円(税込)


CHECK!

法隆寺の夢殿 秘仏・救世観音菩薩立像は年2回(春・秋)に特別開扉があります。


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