廃PET活用アスファルト改質剤/花王㈱のニュートラック/環境に配慮、高耐久舗装にも期待
2025年01月28日(火)
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花王㈱が開発したアスファルト改質剤「ニュートラック5000シリーズ(以下、ニュートラック)」が注目を集めている。廃PETを原材料とした環境配慮型の製品で、アスファルト舗装の長寿命化や施工時間の短縮といったメリットがあり、2024年に佐賀駅バスセンターの補修工事にも導入された。
◆ニュートラックとは
アスファルト舗装は、「アスファルト」と「石や砂などの骨材」でできているが、前者は親油性、後者は親水性なため親和性が低く、それが舗装の耐久性を下げる大きな要因となっている。ニュートラックは、独自の樹脂設計技術により、親水基と親油基の両方の特性を併せ持つため、アスファルト舗装の耐久性を高めることができる。粉砕した廃PETに花王㈱独自の化学処理を施して粉体化したもので、アスファルト合材に約1%添加することで従来の約5倍の長寿命化を実現。それに伴って維持・補修費の削減にも貢献する。
融点が110℃以下と低いことから溶け残りなく混錬されるため、従来のように融け残ったPETが舗装の摩耗によって周辺に排出される問題も解消されている。環境への影響の少なさが評価され、23年に「環境賞」(※1)で環境大臣賞を受賞。NETISにも登録されている(※2)。
◆少ないわだち掘れ、優れた白線の視認性
道路舗装の損傷度を測る上で大きな指標となる「わだち掘れ」について、従来のアスファルト舗装(改質Ⅱ型)とニュートラック入り舗装とを比較すると(※3)、施工から半年で従来型の25㍉に対してニュートラック入りは1㍉と大きな差がみられる。またニュートラックを使用した舗装は黒さが持続することも大きな特徴だ。これにより白線の視認性が高い状態が維持され、交通安全にも大きく寄与する。
◆24年に県内初導入
ニュートラックは、24年に佐賀駅バスセンター舗装補修工事(佐賀市発注)において2741平方㍍の舗装打ち換えに使用された。セメントを使用する半たわみ性舗装と比較して、養生時間が不要のため、施工に必要な時間と人員を削減することができるため、工期短縮に繋がる。
20年以降、ニュートラックの導入は全国で広がりをみせており、公共工事では静岡県の国道139号線をはじめ多くの自治体の市道で使用されている。九州内民間工事でもJR九州のバス専用道路やブリヂストン久留米工場の構内舗装で使用されている。
老朽化した交通インフラの改修と維持管理は今後ますます重要性を増していく。そのなかでこのニュートラックが大きな役割を担ってくれることに期待が集まっている。