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城原川ダム建設事業/佐賀市、神埼市と一体で整備/佐賀河川事務所長 古賀満氏に聞く/城原川ダム関連・神埼市が移転地造成

2025年01月28日(火)

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その他

古賀所長

城原川ダム 建設予定地

ダム本体整備予定地付近

《城原ダム関連》集団移転予定地 発注時期について調整中の平ヶ里地区

《城原ダム関連》集団移転予定地 志波地区は今年半ばの工事完了目指す

嘉瀬川・城原川流域の治水・利水を一体管理


 大都市などを含む日本の土地の多くは洪水時の河川水位より低い低平地に位置しており、洪水氾濫に対する潜在的な危険性が極めて高い。国は現在まで、洪水を安全に流下させるために河道の拡幅、堤防整備、放水路などの整備や、洪水を一時的に貯留するダム、遊水地等の治水対策を進めてきた。日本の治水安全度は着実に向上してきている。

 実例として2017年に発生した九州北部豪雨では、佐田川流域において総雨量400㍉を超える記録的な降雨となり、寺内ダムでは管理開始以降最大の流入量を記録している。しかし、防災操作によりダム下流に流す流量を最大約99%低減し、下流河川の水位を約3・4メートル低減させるとともに、ダム貯水池で大量の流木を捕捉することで多くの被害を軽減させた。


 現在、城原川ダムの建設事業を推進している佐賀河川事務所の古賀満所長に現在の動向を伺った。


佐賀河川事務所長 古賀満氏に聞く


①どのような目的で城原川ダムが建設されるのでしょうか?


 城原川の源は神埼市背振山に発し、佐賀平野を南流して佐賀市蓮池町にて佐賀江川と合流し、筑後川へ注ぐ支川です。城原川ダムの事業箇所は城原川上流の旧脊振村に建設予定のダムです。
ダムを建設する目的は佐賀市、神埼市などの浸水被害の軽減が主な目的になっています。城原川ダムを建設することで城原川の基準地点日出来橋において、河川整備基本方針の目標流量690立方㍍/秒(昭和28年6月洪水相当)のうち、ダムで洪水調節することで330立方㍍/秒にまで流量の低減を図ります。


②2020年4月に佐賀河川事務所が設置されました。どのような事業を行ってきたのでしょうか?


 佐賀地域などは、低平地となっています。その低平地に向かって、山に降った雨が勢いよく河川に流れますが、低平地では勾配も緩いため、水が流れにくい河川形態であり、氾濫の危険性も高い河川です。また、宅地等よりも河川水位が高いこともあり、下流域では内水氾濫も起こり易くなっています。当所はこれまでその対策、被害軽減に向けて、城原川ダムの事業促進、嘉瀬川ダムの管理、佐賀導水路の管理を担ってまいりました。
今年の4月からは、嘉瀬川および城原川流域における治水・利水の一体管理を図るため、筑後川・武雄河川事務所が管理していました嘉瀬川、城原川、佐賀江川、田手川を追加所管することで佐賀・佐賀東部地域を山から海まで水系として一貫した管理を担う事務所となりました。


③今年の城原川ダム建設では、どのような工事がなされるのでしょうか?

 昨年の1月に城原川ダム建設事業に伴う損失補償基準協定書を締結させて頂きました。現在は、次のステップとして7月より個別用地補償交渉に入らせて頂いています。


 また、水没予定地の皆さんの集団移転先を、神埼市志波屋地区と平ヶ里地区の2地区を予定しています。志波屋地区は、昨年9月に工事契約を締結して基盤整備を国で行い、宅地造成を神埼市で行うこととなっています。平ヶ里地区においては、早期工事着手に向けて調整中であり、水没予定地の皆さんの早期生活再建に向けて、引き続き、佐賀県、神埼市と一体となって整備を進めてまいります。
 その他、地質調査やダム本体設計・道路設計等を行っている段階です。


④今後、事業はどのように進んでいきますか?
 
 水没予定地域、周辺地域の皆さんの生活再建を最優先に考え、用地補償を進めてまいります。
 また、ダム本体整備前までに地域を繋ぐ付替道路などの整備も必要であり、その設計等を進め、順次付替道路等の整備を進めていく予定です。その後、最終的に本体の工事に着手することになります。
 今後も、コスト縮減方策や工期短縮の方策なども考慮し、適切な、工事工程、工事発注形態など考えながら事業推進を図る予定です。


⑤地元の建設業に皆さんに期待したいこと
 
 地元の建設業の皆さんは心強いパートナーと思っていますし、私どもにお知恵などもお貸し頂きたいと思っています。
 ダム建設工事は一般的に大きなロットでの発注もありますが、付替道路など現場を知っている地場の建設業の皆さんにお力添えを頂きたい工事も多くあります。
 ダムでの洪水調節や河川の整備、施設の適切な維持管理があるからこそ、地域の安心安全に繋がります。その担い手・地域の守り手である建設業の皆さんと共にパートナーとして引き続きのお力添えを頂きたい



【略歴】
1972年福岡県八女郡広川町生まれ。久留米工業大学附属高等学校(現祐誠高校)卒業後、91年に入省。2018年に筑後川河川事務所九州北部豪雨復興出張所長、22年に国土交通省水管理・国土保全局河川計画課河川計画調整室課長補佐などを歴任、24年4月より佐賀河川事務所の事務所長に就任。




城原川ダム関連


神埼市が移転地の造成工事


 神埼市では、城原川ダム建設に伴い水没予定地住民の集団移転を計画している。移転先2カ所のうち、同市志波屋地区に関しては、昨年11月に造成工事の契約が完了した。残る平ヶ里地区の造成工事に関しては、発注時期や発注形態などの調整を行っている段階だという。 

 市は、水没予定地住民に対し、移転に関する意向調査を実施。その結果をもとに同内志波屋地区および平ヶ里地区を集団移転先として決定した。用地造成工事は、市が神埼地区土地開発公社に委託し、国・県とも協力して整備を進めている。

 志波屋地区(用地面積1㌶)に関しては、先んじて国が、盛土工や排水工などの基盤整備を事業者に発注している。神埼地区土地開発公社では、同一現場で国と連携して宅地盛土などの施工を進めていく必要があることから、同じ事業者と造成工事に係る契約を結んだ。来年半ば頃の工事の完了を目指す。 平ヶ里地区(用地面積1・2㌶)の造成工事に関しては、発注時期や発注形態について調整中としている


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