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嘉瀬川ダム竣工10年「水恵無限をつないで」

2023年01月04日(水)

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竣工時の様子

しゃくなげ広場の記念碑

白石町から感謝のもちがふるまわれた

クイズ大会の様子

 2022年、佐賀市富士町の嘉瀬川ダムが竣工10周年を迎えた。記念式典が催され、「水恵無限」のダムへ感謝を未来につないでいくことを誓った。


■嘉瀬川ダム

 佐賀平野の洪水調節や農業用水の確保を目的に、1973年から建設省(現国土交通省)による調査が開始。39年の歳月をかけ、2012年3月に完成した。
 嘉瀬川ダムは高さ97㍍の重力式コンクリートダムで、総貯水量は福岡PayPayドーム約40杯分の水量に相当する7100万立方㍍と佐賀県随一の規模を誇る。ダム本体工事は鹿島建設㈱・青木あすなろ建設㈱・松尾建設㈱JVが施工した。総事業費は約1780億円。ダム湖であるしゃくなげ湖を一望するしゃくなげ広場がつくられ、地域住民や訪問者の憩いの場となっている。


■10周年記念感謝祭

 22年11月6日に竣工10周年を祝う記念感謝祭がしゃくなげ広場で盛大に催され、山口祥義知事や関係自治体首長、九州地方整備局の藤巻浩之局長ら事業関係者、用地提供者などが多数出席した。
 神事では金刀比羅神社の宮司が祝詞を奏上。上下流の安全とさらなる繁栄を願った。
 神事の後、来賓者の祝辞が述べられ、感謝祭の実行委員長を務めた荒牧軍治氏(さが水ものがたり館館長)は「この式典のテーマは“感謝の心を次世代に引き継ぐ”としました。最近はダム湖で競技が行われるなど、ダムに親しむ機会が増えています。水の恵みはもちろん、このダムを活用して楽しむ世代が現れることを期待しています」と話した。
 式典の後、受益地の白石町からやってきた市民グループがもちつき、そして伝統のもちすすりを披露して会場を沸かせた。
 会場では和太鼓の演奏や高校生の書道パフォーマンス、ジャズのミニコンサートが行われたほか、デミーとマツによる土木クイズも行われた。
 日没後は、ライトアップした記念放流に続いて花火が上がり、感謝祭は盛況のうちに幕を下ろした。


■水恵無限

 嘉瀬川ダム建設に尽力した対策協議会の故姉川治氏は「上下流に与える恵みは無限」との思いから「水恵無限」という言葉を残し、それが広場の記念碑に刻まれている。
 嘉瀬川ダムは10年間、人々を守り、恵みをもたらしてきた。そしてこれからも「水恵無限」の言葉を背負っていく。私たちは感謝を忘れず、この先10年、20年と先人たちの思いをつないでいかなくてはならない。



記念式典での言葉
山口祥義知事
 まずはなによりも、ダム建設にあたって水没した土地で暮らしていた方々に心から感謝申し上げたい。皆さんのおかげで、このダムが多くの命を救っています。
 この10年間、嘉瀬川ダムは獅子奮迅の活躍をしてくれています。近年、気候変動により幾度も豪雨に見舞われましたが、いつも嘉瀬川ダムの様子を注視しています。持ちこたえてくれるたびに、「もしこのダムがなかったらどうなっただろうか」と考え、建設に関わったすべての方々にも感謝しています。
 白石町では、地盤沈下の問題も解消されました。下流域の4市3町のすべてが大いに恩恵にあずかっています。
白石町・田島健一町長
 嘉瀬川ダム完成まで白石町は農業用水として地下水を汲み上げ、地盤沈下に悩まされていました。しかし今、このダムから送られてくる水のおかげで地盤沈下もなく、今年も白石町の稲は豊作となっています。
 私たち白石町民は常に、ダム建設のために故郷を失った方々、建設に尽力してくださった方々への感謝の心を決して忘れてはならないと考えています。
九州地方整備局 藤巻浩之局長
 10周年にあたり、多くの皆様に祝っていただき、ダムを管理する立場として心より御礼申し上げます。
 先祖伝来の貴重な土地、家屋をご提供いただいた地権者の皆様、事業開始当初から今日までご尽力いただいた地域役所の皆様、施工に携わった業者の皆様、本当に多くの方々の力でこの日を迎えることができたと思っております。
 九州ではまだ、佐賀、長崎、熊本、宮崎とこれからいくつもダムをつくらなければなりません。それらがこの嘉瀬川ダムのように地域の方々に感謝祭を開催してもらえるようなダムにしたい、そうなるように私たちは汗をかかなくてはならないと感じています。
 この嘉瀬川ダム、そしてしゃくなげ湖が皆様の憩いの場、交流の場、学習の場として発展することを祈念しております。







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