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【日本建設技術】ミラクルソルで目指すグリーン社会/「FWG透保水性舗装工法 サンライズパークで試験施工」

2023年01月04日(水)

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事例発表を行う原裕社長

実証試験区の赤外線画像では、透水性Asよりも透保水ILBの方が温度は低く、透保水ILBでは緑色より白色の方が温度はやや低く見える

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 日本建設技術㈱(本社・佐賀県唐津市北波多、原裕社長)は、建設廃材の板ガラスや容器包装の空き瓶、車のサイド・リアガラスなど、ガラス廃材をリサイクルした多目的環境材料「ミラクルソル」(発泡廃ガラス)を開発。廃棄物を建設分野で有効利用する「低炭素建設技術」として28工法(緑化、土木、水質浄化など)を提案している。



トップランナーフォーラムで事例発表/「建設業も自然環境への負荷低減を」
 昨年6月24日に開催された第16回建設トップランナーフォーラム(建設トップランナー倶楽部主催)で、原社長は「ミラクルソルでめざすグリーン社会」をテーマに事例発表を行った。
 原社長は、事例発表で高木瀬ふれあい公園(佐賀市)やSAGAサンライズパーク(同)で施工し、実証試験を行った「FWG透保水性舗装工法」の特性を紹介した。
 1995年から約2年間で開発したミラクルソルは、空き瓶などのガラス廃材に発泡剤を混ぜ、約900度の高温で焼成したリサイクル製品。軽量で強固な特徴を持ち、製造条件によって吸水性と非吸水性を調節できる。
 同社では、このミラクルソルを使って、軽量盛土、透保水性舗装、斜面や屋上の緑化、水質浄化など、地球環境の負荷低減に向けた様々な工法を展開。全国で施工事例を増やしている。
 原社長は「毎年、大気中に約40億㌧もの二酸化炭素が蓄積し、地球温暖化や気候変動が起こっている。自然環境への負荷を減らす取り組みを建設業でも進める必要がある」と話した。
 環境土木技術のFWG透保水性舗装工法は、吸水性のミラクルソルを歩道部などの路床や路盤材に用いることで、舗装に保水機能を付加したもの。舗装部において保水した多量の水分が晴天時に気化することで、夏場における路面や周辺地域の温度上昇を抑え、ヒートアイランド現象や地球温暖化の緩和に貢献する。
 高木瀬ふれあい公園の実証試験では、朝方に降雨(午前6時に約20㍉、午前7時頃に約12㍉)のあった2021年9月2日の観測で、非透水性舗装の従来工法と比較して最大で約8度の温度低下(午前10時頃)を確認。ミラクルソルの保水効果により、気化熱で水分を大気中に発散し、周辺の温度を下げたことが分かった。
 SAGAサンライズパークでは、ミラクルソルの吸水柱(直径約10㌢、長さ約2㍍)を設置し、地下水を吸い上げるFWG透保水性舗装工法の試験施工を実施。2022年6月9日の測定で、最大約14度の温度低下を確認した。
 原社長は「一旦雨水を貯留し、ゆっくりと地表に排出するFWG透保水性舗装工法は、環境にやさしいグリーンインフラ。歩道や駐車場の温度を下げ、自然環境への負荷を低減する」と述べた上で、「これからもガラス廃材を使ったミラクルソル工法をPRしていく。コロナ禍が終わったら、マスクを外して、FWG透保水性舗装工法を施工した緑の中を歩きたい」と結んだ。



SAGAサンライズパークでの試験施工

 透保水性舗装は、降雨後路盤内に保水されている間、打ち水効果により路面の温度上昇を抑制する効果があるが、水がない状態になると効果がなくなる。このため、地中の水位が高く、保水した状態を長期間作り出せる可能性があるSAGAサンライズパーク(佐賀市)の一画で、2022年6月9日から10月4日までの118日間、FWG透保水性舗装工法の四つの試験区と対照区との温度差を測定した。
 試験区1と2は舗装種類が透保水ILBで吸水柱がそれぞれ1平方㍍当たり1本と2本、試験区3と4は舗装種類が透水性Asで吸水柱がそれぞれ1平方㍍当たり1本と2本とし、対照区は密粒度Asとした。
 試験区ごとに最大5度以上の温度差が確認された日数は118日のうち、試験区2が88日と最も多く、試験区1が71日、試験区4が66日と続き、試験区3が46日だった。これらが期間中の全日数に占める割合でみると、それぞれ74・6%、60・2%、55・9%、39%となった。
 最大の温度差は試験区2が13・5度と最も大きく、次いで試験区1が11・4度、試験区4が10・4度で、試験区3が最も小さく10度だった。
 この結果から、温度上昇を抑制する効果は透保水ILBが透水性Asよりも、また吸水柱の数は2本が1本よりも、それぞれ発現していることを確認した。
 今回、吸水柱と組み合わせたことで、吸水柱1本の試験区で降雨の7日後まで、2本の試験区で降雨の10日後まで温度抑制効果が確認できた。





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