脱炭素社会の実現に向けて
「ゼロカーボンシティさがし」推進パートナーの取組み④ ~㈱バイオテックス~ /地中熱利用で低炭素化を「最初からすべて求めず、粘り強く」
2022年08月25日(木)
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下水道管などのパイプライン修繕・改築工事や調査業務、橋梁の維持補修工事などを手掛ける㈱バイオテックス(佐賀市・原田烈代表取締役)。エコカーや電力デマンド管理システムの導入などを進めている同社が、脱炭素への取り組みとしてもっとも力を入れているのが、再生可能エネルギーの一つである地中熱を利用した空調システムの施工と、その施工技術の研究である。
地中熱とは浅い地盤中に存在する低温エネルギーのことで、夏場は外気温よりも低く、冬場は逆に高くなるという性質を持つ。この温度差を冷暖房に利用するのが地中熱空調システムで、節電・省エネによるCO2の削減効果を生む。
同社は、佐賀県内有数の施工実績を持ち、来年開業を目指すSAGAサンライズパーク整備工事(SAGAアクア)にも参加し、地中熱空調システムの導入に尽力した。
しかし地中の熱を利用するためには地中熱ヒートポンプの設置や垂直方向へ地中熱交換器の埋設が一般的であり、コストの高さが普及のハードルを上げてしまっているのが現状だ。そこで同社は、地中熱交換器を効率良く埋設する工法について研究開発を進めている。
技術開発により導入コストを下げることが、地中熱利用の普及、ひいてはCO2削減に繋がる。原田代表取締役は、技術の進歩による便利さと環境を守ることが相反するとした上で「人の命にもかかわるため、エアコンの恩恵は我々の生活から切り離せない。地中熱を利用することで、低炭素化を実現しなければ」と話す。
また脱炭素社会を目指す上で避けて通れないのが省エネだ。環境にやさしい技術を取り扱う企業だけあって、代表をはじめ社員の省エネに対する意識は高く、様々な取り組みを行っている。
主な取組み内容は社用車として電気自動車や水素自動車などのエコカーの導入、LED照明・人感センサーへの交換、設定デマンド値を超える予想になるとアラートで知らせる管理システムの導入、トイレや散水への雨水利用、吹き抜けテント・ロールカーテンの設置など。
室内温度と湿度を「見える化」し、意識的に省エネに取り組むため、社屋内の複数箇所に温湿度計を設置。エアコンのオンオフは「暑い」、「寒い」というような感覚ではなく、きちんと切り替えるラインを取り決めた。
社屋に併設された自社フィットネスジムの外側には、遮光効果を期待してゴーヤが育てられている。世話をしているのは今年の新入社員。社内の仕事を任せて成功体験を積ませたいという代表の考えだ。見事に育ったゴーヤは室温の上昇を防ぎ、省エネに一役買うだろう。
原田代表取締役は脱炭素化の取り組みについて「環境に対し貢献しようと行動を起こすことが大事。最初からすべて求めるのは難しい。補助金などを利用して、出来ることから粘り強くやるしかない。環境に気を付けるということは、手間をかけるということ」と語った。