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西九州新幹線が22年秋開業、博多―長崎間約30分時間短縮

武雄、嬉野は地域活性化に期待

2022年01月04日(火)

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袴野橋りょうの桁降下完了

武雄温泉駅

嬉野温泉駅2

 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT鉄道・運輸機構)が整備を進めている西九州新幹線(九州新幹線西九州ルート)の武雄温泉―長崎間(延長約67㌔)が2022年秋に開業する。博多―長崎間の所要時間は約1時間20分となり、在来線の特急に比べ約30分の時間短縮効果がある。県内には新たに武雄温泉駅、嬉野温泉駅が設置され、武雄市や嬉野市などの沿線自治体は地域活性化に期待を寄せる。(写真はJRTT鉄道・運輸機構が提供)





 ◆武雄温泉駅から長崎駅までレールが繋がる◆

 西九州新幹線(武雄温泉―長崎間)は、佐賀県武雄市、嬉野市、長崎県東彼杵町、大村市、諫早市、長崎市を経由する延長約67㌔。1973年に九州新幹線(起点・福岡市、終点・長崎市、経過市・佐賀市)の整備計画が決定され、様々な経過を経て、2008年3月に武雄温泉―諫早間、12年6月に武雄温泉―長崎間で工事実施計画の認可を受け、鉄道・運輸機構が工事に着手した。
 21年4月に九州旅客鉄道㈱(JR九州)が路線の名称を西九州新幹線に決定したと発表。同年9月にレールの敷設工事が完了し、武雄温泉駅から長崎駅までのレールが1本に繋がった。


◆22年秋開業へ、準備が着実に進む◆

 武雄温泉―長崎間の構造物の種類と延長は、トンネルが41㌔(61・2%、31カ所)、高架橋が13・6㌔(20・3%)、橋りょうが7・1㌔(10・6%、168カ所)、切土および盛土が5・3㌔(7・98%)を占めている。
 県内区間のトンネルでは俵坂トンネルが延長約5705㍍で最長となり、俵坂トンネル(東)他を鉄建・竹中土木・深町JV、俵坂トンネル(西)他を前田・松尾・下JVがそれぞれ施工した。ほかにも三坂トンネル(延長約1400㍍、清水・青木あすなろ・唐津土建JVが施工)、武雄トンネル(延長約1380㍍、戸田・りんかい日産・黒木JVが施工)がある。
 このほかの構造物についても、武雄温泉駅高架橋他を前田・松尾・大和JV、大山路高架橋他を佐藤・三軌・日本建設技術JV、袴野橋りょう他を不動テトラ・大豊・政JV、大草野トンネル他を東亜・あおみ・森永JV、嬉野温泉駅高架橋を若築・安部日鋼・有田JVがそれぞれ施工し、土木構造物は全て完成している。
 軌道の構造は高速での走行安定性や省メンテナンスを考慮し、スラブ軌道(通常の線路のまくらぎに代わり、軌道スラブと呼ぶコンクリート盤にレールを固定するもの)が標準軌道構造となる。
 現在は駅舎の内装工事、新幹線の走行に必要な電力を供給する電気工事などの仕上げに向けた工事を実施。これらの工事と並行して、完成した構造物や線路、駅舎などが、新幹線が安全に走行できる設備となっているかを確認するため、鉄道事業者と共同で監査や検査などを進めている。


◆県内には武雄温泉駅、嬉野温泉駅が新たに設置される◆

 武雄温泉駅のデザインイメージは『温泉街になじむ歴史と新しさを感じる駅』で、辰野金吾が手掛けた楼門を駅舎のデザインに生かした。また、在来線との対面乗り換えとなるため、在来線と新幹線が同一ホームで乗り換えられる構造となっている。
 一方、嬉野温泉駅のデザインイメージは『湯どころの趣のある駅』。大屋根は軒の出が深く、ホームに立つと三角屋根の空間が見えるなど、温泉宿の装いを洗練された和の構成で表現している。









武雄市・小松政市長「駅前整備で交流空間を創出」
 あけましておめでとうございます。皆様方におかれましては、希望に満ちた新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 令和3年8月11日からの大雨による災害から、5か月が経過しようとしています。被災されました方々に対し改めてお見舞い申し上げます。本市においては令和元年豪雨災害を上回る規模の甚大な災害が発生いたしましたが、被災された方々の懸命のご努力に加え、市内外からの多くの方々のご支援により、復旧・復興が着実に進んでいます。支えてくださった多くの方々に対して心より感謝申し上げます。
 さて、武雄市では被災された方々に寄り添いながら、生活の再建、なりわいの再建を進め、さらに、誰もが安心して住み続けられ、新たなにぎわいが生まれる創造的復興に取り組んでいます。
 そのような中、いよいよ今年の秋には西九州新幹線が開業します。武雄市では、開業に向けて武雄温泉駅の周辺に駅前広場や観光交流センター(仮称)を整備し、多くの来訪者や市民が交流し、楽しむことができる空間を創出する計画です。
 駅を起点として温泉街や図書館などを気軽に楽しむことができ、少し足を延ばすと樹齢三千年の川古大楠や雄大な黒髪山などの観光資源も多いことから、来訪者の方々に武雄での素敵な時間を過ごしていただけるよう、観光資源や地域資源の磨き上げを進めて参ります。
 また、武雄市は西九州エリアの中心に位置し、新幹線開業でさらに交通環境が充実することから、交通の要衝としての“西九州のハブ都市”として機能が高まります。そのため、近隣自治体と密に連携を図りながら、広域エリアの魅力をさらに高めていくことで、まちの元気や地域の元気を生み出していく所存です。
 今年1年が皆様にとりまして、明るく幸多き年になりますことを祈念いたしまして、新年のご挨拶といたします。









嬉野市・村上大祐市長「駅周辺に新たな〝まち〟が現出」
 新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。旧年は、引き続きのコロナ禍への対応に加え、未曽有の豪雨災害にも見舞われた1年でした。復旧・復興に全力を挙げて支援をいただいた建設業の皆様をはじめ、すべての関係者に深甚なる感謝を申し上げます。
 令和4年という年は、嬉野市にとっての新たな時代の幕開けとして歴史に刻まれる年になると確信しています。本年秋には西九州新幹線が開業し、嬉野温泉駅周辺に官民連携で進めてきた新たな「まち」が現出します。嬉野市にとって「百年の念願」の鉄路。この大きな交通変革を機に、市民の総力を結集した「おもてなし体制」を整え、佐賀・長崎両県における西九州地域の観光のハブ拠点としての存在感を高める取り組みを加速させます。
 駅周辺整備に市民の期待と関心が高まっていることを実感します。昨年11月に開かれた駅舎見学会などの開業1年前記念イベントには約5千人が訪れ、嬉野市の新たな玄関口となる嬉野温泉駅のイメージ動画を発表しました。旅館をイメージさせる和の趣と緑豊かな空間演出に加え、国直轄事業による整備エリアには国重要伝統的建造物群保存地区の塩田津をモチーフとした情報発信施設を配置して、これから始まる旅への期待感を高める仕掛けを随所に盛り込んでいます。
 民間開発エリアでは、積水ハウスとマリオットインターナショナルが手掛ける宿泊特化型のホテルの進出をはじめとして今後の積極的な民間投資の動きがあり、地元で活躍する若き経営者たちがセンスをいかんなく発揮する飲食店や土産物店の出店を計画しています。
 嬉野温泉駅前は、官民連携による整備手法を選びました。緑深き山々に連なる茶畑、蛍火群れ飛ぶのどかな田園風景、窯元、歴史遺構など嬉野市に点在する魅力的なスポットを、新駅を起点に周遊していただく設計思想になっています。
 嬉野市はこれからが面白い。これからの取り組みにもぜひご期待ください。









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