【SAGA建設技術フェア2019】特別講演 /「唐津城石垣復旧における地盤工学的考察」~これまでの歩みや工法など紹介~ /佐賀大学名誉教授三浦哲彦氏
2019年06月20日(木)
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佐賀大学名誉教授の三浦哲彦氏は、「唐津城石垣復旧における地盤工学的考察」と題し講演。自身が携わってきた城郭石垣復旧のこれまでの歩みを振り返りつつ、復旧工事の工法などを紹介した。
はじめに三浦氏は「城郭石垣との関りは、1991年度の佐賀大学学生の卒業研究に始まった。研究成果を92年の土木学会西部支部で発表したところ新聞記事として取り上げられ、広く知られるようになった」と振り返った。その後の全国調査で、石垣が外側に膨らむ「孕み出し」という現象は、排水不良や樹木根の押し出しなどに起因することが判明したと話した。
また現地調査で石垣の孕み出しには唐津城特有の問題もあったことが判明。樹木根の影響に加え、排水に伴う背面土砂の吸い出しにより石垣の内部にすき間が生じていた。
こうした状況について三浦氏は「石垣の特徴は摩擦力が高いことで、簡単に崩れることはない。ただし、背面の状態が不安定になることで、表面の石垣に影響が出てくる」と解説。石垣の修復を行うに当たって「石垣を取り外したときに、上にある天守閣が崩れないか」という懸念について▽前面構造物抑止案▽地盤改良案▽アンカー補強案―などのさまざまな工法での修復案を検討したことを述べた。
検討の結果、施工時の安全性を確保するためにグランドアンカーを用いた補強案を採用した。始めに石垣前面に施工足場にもなる抑え盛土を行い、上段の積み石を撤去しながら積み石背面にコンクリート枠工・グランドアンカーを設置。石垣の安定を計りつつ逆巻き工法で順次積み石を撤去・解体し、下部より積み直しながら順次巻き上げる。再構築する積み石は、間詰コンクリートでコンクリート枠工に定着するなど、工法について解説した。
講演の中で三浦氏は「わたしも唐津市の出身であり、唐津城に対する思い入れは強い」と話し、現在の復旧状況などを紹介した。