特集記事

【行政トップインタビュー】

都市を繋げる道路を構築 /逢坂謙志県土整備部長に聞く /建設業者は災害時のパートナー

2019年08月08日(木)

特集記事

人物

逢坂謙志県土整備部長

整備を進めている有明海沿岸道路の六角川大橋

更新した吉野ヶ里歴史公園の大型複合遊具

 佐賀県の逢坂謙志県土整備部長に同部の役割や県の取り組みについて聞いた。逢坂部長は「分散する都市を有機的に繋げる道路ネットワークの構築、県民の生活や産業を守る治水対策が必要」と述べ、有明海沿岸道路や佐賀唐津道路などの広域幹線道路、国土強靭化の緊急対策を重点的に推進する方針を示した。地域の建設業者については「佐賀県の社会資本整備で欠かせない存在であり、災害時のパートナー」と話した。



―県土整備部の役割


 県土整備部は佐賀県内の道路、河川、都市計画などの社会資本整備を担っている。都市が分散しているのが佐賀県の特性で、佐賀市をはじめ、唐津市や伊万里市、鹿島市、嬉野市、武雄市、神埼市、鳥栖市など東西南北にそれぞれコアとなる都市や観光地がある。県土の特性を踏まえて佐賀県を上手に使うには、色々な都市を有機的に繋げるための道路ネットワークを構築し、移動をより円滑にする必要がある。
 また、佐賀県は広大な平野を有しているが、潮位の影響を受けやすく、自然排水が困難な低平地を多く抱えているという特性がある。筑後川や六角川、嘉瀬川など大きな川では堤防の高さが高く、河川が氾濫すると水害などの被害が非常に大きい。県民の生活や産業を守るための治水も非常に大きなウェイトを占めている。
 道路整備や治水対策の必要性が非常に高い土地柄なので、県土整備部に与えられた任務だと思ってしっかりとやっていきたい。


―道路整備事業


 県内の都市を有機的に繋ぐために有明海沿岸道路や佐賀唐津道路、西九州自動車道などの広域幹線道路ネットワークが大事になっており、有明海沿岸道路、佐賀唐津道路、西九州自動車道、国道498号の広域幹線道路について重点的に整備を進めている。
 一方で、歩道整備や通学路整備、渋滞対策など、安全で安心な生活を支える道路整備も着実に推進したい。
 佐賀県は人口10万人当たりの人身事故発生件数が全国ワースト2位(2018年)と高いので、交通事故を減らすためにデザインのチカラを活用した交通安全意識改革・運動「SAGABLUE PROJECT」を展開している。
 県管理道路の交差点を青色(ブルー)に舗装することで、ドライバーに交差点の存在を認識させる取り組み。青色をドライバーが見ると集中力が高まり、スピードを落とすなどの心理的効果があるというので効果を期待している。
 5月17日には本格始動のイベントとして、ブルーにカラー化された佐賀県庁正門前交差点で小学1年生の児童に熱気球の絵を描いてもらった。今後も様々な取り組みにより交通安全の意識が県民に広まり、交通事故が少なくなればと考えている。


―治水対策と国土強靭化


 近年、災害が局地化、激甚化しており、治水対策では河川改修や土砂災害対策などのハード整備に加え、住民が適切な避難行動をとれるよう全力で支援する。県では水防法改正に伴い、県管理の31河川で洪水浸水想定区域図を策定したほか、テレメータ化している県管理河川の全ての水位情報を18年6月から試験的に一般公開しており、住民に避難してもらうために必要な情報をわかりやすく提供している。
 また、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」により、河川の樹木伐採・河道掘削、堤防決壊までの時間を引き延ばすための堤防強化、内水浸水防止のための下水道事業と連携した河川改修、砂防堰堤の緊急対策、土砂災害警戒区域の基礎調査など、ハード・ソフトの両面から集中的に取り組んでいく。
 一方、今年度は少雨により、嘉瀬川ダムの貯水率が過去最低を更新し、一時、枯渇も懸念された。利水者間の調整を図り節水に努めるとともに7月下旬の降雨により貯水率が回復した。


―吉野ヶ里歴史公園


 都市計画でいうと吉野ヶ里歴史公園があり、18年度の入園者数が約77万4000人で過去最高の記録を更新した。これは子どもの無料化や子育てし大券の広報強化、イベントの充実、大型複合遊具の更新などの効果が出たと思う。
 今年も利用拡大に向け、子育てし大券の配布エリア拡大、花育事業(新規)の実施、ふれあい館のオープン、スタンプラリーに取り組みたい。


―週休2日、ICT活用工事等

 県では、労働環境の改善や生産性向上を目的に今年3月から週休2日の試行工事、ICT活用の試行工事を導入した。将来にわたり、社会資本の整備を安定的に継続するためには建設産業の担い手確保が重要であり、土木工事の一部で週休2日工事を実施する。若い人が建設業界に就職してくれるように、建設業の魅力向上という観点で取り組んでいく。
 ICT活用工事は、IT技術を活用して生産性を向上させ、公共工事の品質確保と建設現場の安全性を確保するために導入する。土工量1000立方㍍以上の土木工事が対象だが、県内での施工実績はあまり上がっていないので、ICT工事にも積極的に取り組んでほしい。
 また、夏の話題として、熱中症対策に関する現場管理費を補正する。工期内の真夏日の日数に応じて補正値を算出し、現場管理費を増額するので、現場での熱中症対策に取り組んでほしい。


―最低制限価格等の引き上げ


 県では、国が低入札価格調査基準を見直したことを踏まえ、今年7月から最低制限価格等を予定価格の90%から92%に引き上げた。工事の品質低下、下請け業者へのしわ寄せ、ダンピング受注の防止などが目的で、建設業界からの要望もあった。
 建設業は社会資本の整備や維持管理、災害時の対応、雇用の受け皿など、幅広く県民生活を支え、地域を守る重要な産業であり、建設業界の経営力と技術の向上に繋がると考えている。


―建設業の担い手確保推進事業


 同事業では、県内建設業の担い手を確保するため、県内の小中学生や工業高校生などを対象に建設業の魅力や情報を発信している。具体的には▽小中学生に向けた建設業の魅力発信▽高校生と建設業若手就業者との意見交換会▽県内建設企業の合同説明会―を実施する。
 小中学生に向けた建設業の魅力発信として、ドローンでの3次元測量の操作実演や、フライトシミュレーター体験などをやってもらう。最近の建設業の先端技術に触れ、建設業の面白さや魅力を感じてもらいたい。
 二つ目が工業系高校2年生と工業系の高校を卒業して建設業界で働いている先輩が、建設業で働くやりがいなどについて意見交換するもので、秋に実施する予定。先輩から仕事の内容や職場の状況など、生の話を聞き、建設業に関心を持ってほしい。これは初めての取り組みとなる。
 三つ目は県内建設企業のPRということで、工業系高校2年生を対象に大きな規模で企業説明会を行う。今年12月に開催予定で、会社のPRに加え、建設業の魅力も説明してほしい。


―地域の建設業者


 全国各地で災害が発生しており、佐賀県でもきちんと災害に備えておく必要がある。そういう中で、災害が起きた時に素早く現場に駆けつける建設業者は、県民が安全安心に暮らしていくために必要なパートナーだと思っている。
 また、建設業者は、佐賀県の社会資本を整備する上でも欠かせない存在であり、県と連携し車の両輪となって、そういった役割を担ってほしい。
 そのため、今後とも建設業界から色々な意見を聞きながら、そういう声にもしっかりと応え、より良い社会資本整備につなげていきたい。


【略歴】
 1992年3月京都大学大学院工学研究科修士課程交通土木工学専攻修了。同年4月建設省に入省。独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構企画部企画課長、本州四国連絡高速道路株式会社企画部企画課長、愛知県建設部道路監、中国地方整備局広島国道事務所長、佐賀県県土整備部副部長などを歴任し、2019年4月から現職。1966年8月8日生まれ。52歳。



TOP