【現場から】
有明海沿岸道路・大川佐賀道路 /諸富地区で下部工など進む /19年度には諸富高架橋上部工に着手
2019年01月01日(火)
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有明海沿岸地域を結ぶ広域幹線道路ネットワークとして、有明海沿岸道路の整備が進んでいる。区間の1つが、佐賀市南部を通過する国道208号大川佐賀道路。2018年度は、用地買収や諸富地区の施工を行っている。
■整備効果、大川佐賀道路の概要
有明海沿岸道路は、福岡県大牟田市を起点に、大川市、佐賀市、小城市や鹿島市などの有明海沿岸地域を経由する延長約55㌔㍍の地域高規格道路。九州佐賀国際空港などの交通拠点や九州横断自動車道、佐賀唐津道路の整備と一体になって、事業の推進が図られている。
佐賀県内の有明海沿岸道路は、大川佐賀道路、佐賀福富道路、および福富鹿島道路で構成。大川佐賀道路は国土交通省佐賀国道事務所、佐賀福富道路と福富鹿島道路は佐賀県が整備する。
有明海沿岸道路の効果として、物流の効率化や一般道の渋滞緩和が期待される。鹿島市から大牟田市までは、最大60分所要時間を短縮。また、医療施設へのアクセス改善による救急医療活動の支援、災害時の緊急輸送道路としての役割も見込める。
大川佐賀道路は、延長約9㌔㍍。佐賀JCT(仮称)で佐賀福富道路と佐賀唐津道路、大野島ICで大川バイパスに接続する計画。08年度に事業化し、佐賀JCTから東与賀IC(仮称)間で工法を検討するための試験盛土や橋台の施工などが行われてきた。18年度は約33億2000万円の事業費を充て、諸富地区の早津江川橋上部工・下部工、諸富高架橋下部工および改良工事などに取り組んでいる。19年度には、諸富高架橋上部工に着手する見込み。
■安全協議会の取組 仕事場見学会や通学児童見守り
諸富地区の安全協議会は18年度当初に発足し、13工事に携わる10社で構成されている。㈱中野建設の廣渡薫氏が、会長を務める。
諸富地区では現場同士が近接しており、工事用道路も8工事で共有している。工事ごとに安全掲示板を設置する代わりに、安全協議会で8工事分の合同安全掲示板を設置。省スペース化を図った。
また、工事作業予定についても合同看板を設置。大型車の出入り予定が一目で分かり、地域住民への告知に加え業者間の工程調整にも役立っている。
8月には仕事場見学会「おやじの日」を開催。土木工事への理解を深めてもらうために、施工者や発注者の家族を現場に招き、重機への搭乗体験やドローンの見学を行った。廣渡氏は「重機やドローンの見学に、子どもたちも楽しんだようでした」と笑顔で振り返る。このほか地元の祭りに協賛し、地域貢献にも努めている。
安全協議会内には、女性技術者の会も立ち上げている。安全協議会から6人、佐賀国道事務所から1人が参加。9月の秋の交通安全県民運動に合わせ、通学児童の見守り活動を行った。女性技術者による安全パトロールも予定。女性ならではの視点から、各現場の改善点を探るのが狙いだ。
廣渡氏は、諸富IC構造物先行工事の現場代理人も務める。地盤改良工やカルバート工が、主な施工内容。国道444号から諸富ICへの合流路の一部となるEランプ函渠、水路となる3号函渠が施工されている。
Eランプ函渠は、コンクリート養生期間の短縮を図るため、現場配合試験にて7日強度で設計基準強度を満たす配合量により施工。温度ひび割れの対策には、ひび割れ誘発目地を4㍍以下の間隔で設置した。3号函渠は、現場打ちからプレキャストボックスカルバートの据え付けに変更し、工期短縮と品質向上を実現。また、クレーンヤードが超軟弱地盤帯であったため、事前に地耐力の検討を行い、浅層改良および敷鉄板により120㌧クレーンの安全足場を確保した。
夏季の作業では、熱中症を十分に警戒。「ファン付の作業着を導入し、施工箇所の近くに休憩所を2つ設けこまめな休憩を呼び掛けました」と対策に力を入れた。
同現場では本体工事はほぼ完了し、埋め戻しなど一部の工程を残すのみとなっている。
全線開通に向けて、大川佐賀道路をはじめ各区間で工事や事業着手に向けた調査が進められている。廣渡氏は「有明海沿岸道路は、人の交流や産業の発展に大いに役立つ。工事を通じて、佐賀や沿岸地域に貢献できれば」と語った。