特集記事

【県内企業の技術紹介】遠隔立会システム「アテネット」、ICT法面工/島内エンジニア「受発注者の軽減負担へ」

2020年08月06日(木)

特集記事

その他

タブレットなどで現場の動画を見ながら立会簿を作成できる「アテネット」

法面の3次元出来形計測データ

◆遠隔立会システム「アテネット」◆ 現場訪れずに検査、業務効率化/接触減らし、コロナ対策にも

㈱島内エンジニア(佐賀市、徳富泰信代表取締役)は、現場を訪れることなく遠隔で立ち会い検査ができるシステム「アテネット」を開発した。検査のための移動時間、待ち時間を削減することで、発注者・受注者ともに業務の効率化を図る。新型コロナウイルス対策として、接触機会を減らす効果も期待される。

アテネットでは、タブレットなどに立会簿や現場からのリアルタイムの映像を表示する。現場の様子を動画・静止画で確認しながら、立会簿や帳票への書き込みができる。動画から静止画の切り取り機能も搭載し、立会簿には手書きの署名も可能。作成した立会簿はクラウド上に保存し、場所を問わずダウンロードができる。立会に必要な機能を備えた、オールインワンシステムとなっている。

アテネットは、パソコン、タブレットやスマートフォンなどの端末で利用する。複数のカメラや端末で撮影している映像を切り替えながら表示できるため、検査箇所や現場の俯瞰など異なる視点から確認が可能。橋梁など構造物の点検では、近接が難しい検査箇所をカメラで撮影し、遠隔地から確認することもできる。

同社は九州地方整備局、佐賀県、佐賀県有明海沿岸道路整備事務所など発注者にアテネットのプレゼンテーションを行っている。現場と複数の職員がいる庁舎をつなぎ、現場を訪れずとも立会ができるため、評判も良いという。

大手ゼネコンや県内業者など複数の建設業者も、既にアテネットを導入している。岡本建設㈱(小城市、岡本秀実社長)は、有明海沿岸道路整備事務所の発注工事の際に、段階確認の監督員立会で試験的にアテネットを使用した。岡本建設㈱の西山直秀氏は「立会のたびに監督員との日程、時間調整が必要となり、それに伴う作業の手待ちが発生してしまう。アテネットを使用した場合、立会の準備が整った時点で立会を行うことができるので、作業効率が上がり生産性が向上する」とアテネットの利便性について語った。

アテネットは、国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)にも、登録を申請中。発注者や建設業者の意見を踏まえ、秋ごろまで本格的な販売を控えた改良を続ける。徳富代表取締役はアテネットについて「遠隔での立ち会い検査は、働き方改革にも寄与し、コロナ禍での対応策にもなる。改良を重ねていき、広く活用してもらいたい」と普及への意気込みを語った。
◆ICT法面工◆ 3次元測量、出来形管理/災害復旧で需要増

国交省では、ICTを建設現場に導入することによって生産性向上を目指している。ICT法面工では、3次元起工測量▽3次元設計データ作成▽3次元出来形管理などの施工管理▽3次元データの納品―の各段階でICT施工技術を活用する。ICT施工技術により、法面上で人が直接出来形計測をすることなく安全に出来形管理を行える。

㈱島内エンジニアでも、ICT法面工での出来形管理の実証実験に取り組んだ。日本基礎技術㈱(東京都、中原巖社長)が元請けで施工した法面工で、出来形管理を受託。法面をドローン、TLS(地上型レーザースキャナー)で測量し、3次元データを作成した。ドローンを使った法面の撮影、測量は、日照条件など制約が多く飛行計画の立案も難しい。同社がこれまで培ってきた技術、経験を生かした。

近年は豪雨災害が頻発しており、災害復旧の法面工の件数増加も予想される。徳富代表取締役は「災害で工事が増えれば、発注者、受注者双方の負担軽減が求められる。ICTを活用し、効率化を図っていくべきだ」と述べた。


「アテネット」と「ICT法面工」の紙面掲載内容はコチラ


TOP