【企業の技術紹介】鉄筋結束ロボ「トモロボ」 省力化で現場の生産性向上/建ロボテック㈱が開発
2021年01月04日(月)
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レール鉄筋上を移動し、鉄筋結束を自動で行うロボット「トモロボ」。建設現場の省力化を目指した製品を手がける建ロボテック㈱(香川県、眞部達也代表取締役)が開発した。職人が手作業で行う結束作業の8割以上を、トモロボによる半自動化を可能としている。
トモロボは人と共に働き、単純な結束作業から職人を解放し、より高度な作業への注力を可能にする「職人力発揮ツール」として現場を支える自走型協働ロボット。建設現場の生産性向上と職人の負担軽減を目指している。
トモロボを使用するには、市販の鉄筋結束用の電動工具を取り付ける。進行方向と結束の方法を選択しスタートボタンを押すと、本体が鉄筋上を移動しながら交点を感知して、自動的に鉄筋を結束する。鉄筋の高さのずれ、傾きなども感知して結束作業を行う。
横移動補助装備のトモロボスライダーを組み合わせて使用することもできる。トモロボスライダーの導入により、2人で行う本体の横移動を1人でも行えるようになり、作業ロスを軽減。複数台のトモロボを1人で運用することを可能とした。
2020年9月には、鳥栖市内の物流施設建設現場でトモロボの見学会を開催。県内から参加した鉄筋工事関係者の目の前で、トモロボが鉄筋上を移動し結束作業を行った。
眞部達也代表取締役(建ロボテック㈱)に聞く/「職人の負担減、熟練作業に注力」
人とロボットが共に働く建設現場を実現し、建設業界の未来に貢献するという思いから名付けられたトモロボ。職人たちが単純作業から解放され、高度な技術を要する作業に注力できる環境を整える。トモロボにより、技術力のある職人たちの仕事が正当に評価されることを目指している。眞部代表取締役に、開発の経緯など話を聞いた。
― トモロボの開発にあたり、機能面で特にこだわった点
ユーザーが使いやすいロボットにすること、購入できる価格帯にすること、現場で動かせるよう重量制限をクリアすること。この3点を目指して開発した。
特にこだわったのは、操作の分かりやすさ、シンプルさ。何でもできるロボットには、無駄もある。使う人に無駄を感じさせないように搭載する機能を必要なものにしぼった。
― 開発で苦労したことは
鉄筋上を安定して走れる走行性能を実現することに苦労した。最初に作ったロボットは、自重で鉄筋がたわんでしまい、1、2㍍走ると脱線したり転倒したりしていた。安定的な走行を実現させるために、試行錯誤を重ねた。
鉄筋の重ね継ぎは、結束機の仕様では対応が難しい。重ね継ぎに対応するには、結束機の可動範囲が重要。鉄筋の状態に合わせてフレキシブルに動くよう、リリース後にも改良を続けた。
リリース後には、ユーザーの反応なども踏まえトモロボの横移動、レーンチェンジを楽に行えるようにトモロボスライダーを開発した。
― 導入したユーザーの反応は
トモロボを見た職人さんからは「自分たちの仕事を取られるのでは」、「自分でやった方が早い」と言われることがある。そうした際には、人の仕事を取るロボットではないことを説明している。仕事を楽にして生産性を上げること、全自動ではなく人が操作することで人と共に働くロボットであることを伝えると、納得してもらえる。トモロボを使えば、単純な結束の作業から解放されとても楽になると受け止めている方もいた。
― 今後の展望、普及に向けた取り組みなど
トモロボは全国に30台販売し、鉄筋工事業者、リース業者などが購入されている。
トモロボは3台以上同時に稼働させると、生産性も飛躍的に上がる。1現場で最大4台稼働させたことがあり、現在は同時稼働を円滑に行えるよう開発、改良に取り組んでいる。また、トモロボを効果的に運用できるオペレーターを全国に増やすために、教育カリキュラムを作成する。
ある程度の人数までオペレーターを増やせれば、料金システムを見直したい。売り切り方式から、現場でトモロボを稼働させた分だけ料金が発生する従量課金の方式を検討している。鉄筋工事業者は利益率向上、ゼネコンはコスト削減、かつ開発側が利益確保できるようなスキームを作りたい。
トモロボの開発目的は、鉄筋工事業界の人手不足の解決と利益率向上。ユーザーの成功を通じて、建設業界全体に貢献できればと思う。重労働、単純労働がまだある躯体工事の領域にも、省力化の技術開発を広げていきたい。