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【企業の技術紹介】リモートで現場の立ち合い検査 遠隔臨場の導入進む 県発注工事で適用 /㈱島内エンジニア、検査システム開発

2021年01月04日(月)

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▲タブレットなどで、現場の動画を見ながら立会簿を作成できる「アテネット」(写真の一部を加工しています)

▲中継器の設置イメージ

 ICTを活用し、現場を訪れることなく遠隔で立ち会い検査を行う「遠隔臨場」の導入が、全国および佐賀県内でも進んでいる。2020年12月より、県は対象となる工事で受発注者間の協議が整った案件について遠隔臨場を適用すると発表。県内の企業では、㈱島内エンジニア(佐賀市、徳富泰信代表取締役)が遠隔臨場検査監督システムを開発した。大手ゼネコンや県内業者など複数の建設業者が、既に導入している。


 ■県土整備部が遠隔臨場を適用 リモート立会で作業効率化  

 遠隔臨場では、タブレットやウェアラブルカメラを用いて、現場の映像、音声をリアルタイムで通信して、遠隔地から立会などを行う。検査のための移動時間、待ち時間を削減でき、新型コロナウイルス対策として、接触機会を減らす効果も期待できる。  


 県は、県土整備部発注工事の建設現場において、段階確認、材料確認と立会を必要とする作業に遠隔臨場を適用する。受発注者間の作業効率化を図り、施工履歴の管理などに取り組む。  


対象となるのは▽事務所からの距離が遠方で移動時間を要する工事箇所▽段階確認・材料確認または立会が必要な工事箇所▽遠方臨場を実施可能とする通信環境の確保ができる工事箇所―。受発注者間で協議を行い、実施の有無を決定する。


■県がトライアル発注 遠隔臨場システム 「アテネット」  

 県土整備部の建設・技術課では、20年12月に遠隔臨場検査監督システム「アテネット」を試験的に使用すると発表した。アテネットは、㈱島内エンジニアが開発。同課では、県内の企業が開発した製品を試験的に使用するトライアル発注製品にアテネットを採択している。  


 アテネットは、パソコン、タブレットやスマートフォンなどの端末で利用する。立会簿・帳票作成、動画中継、動画キャプチャーなど、立会に必要な機能を1画面に全て搭載している。20年10月に、国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム:QS―200026―A)にも登録された。 

 

 アテネットでは、クラウドを介し、複数の確認作業をリアルタイムで遠隔地から共有できる。動画中継では、最大4地点との中継が可能。現場の検査箇所、現場の俯瞰映像など複数の動画を確認しながら、立会を行える。  

立会簿・帳票作成では、手書きの署名機能も搭載している。作成した立会簿はクラウド上に保存し、場所を問わずダウンロードができる。  


 同社は、九州地方整備局や佐賀県有明海沿岸道路整備事務所などの発注者に、アテネットのプレゼンテーションを行っている。現場を訪れずとも立会ができるため、評判も良いという。また他のウェアラブル端末と比べ、通信時の遅延も少なく映像も鮮明なこともアテネットの強みだ。  


アテネットのリリース以降、同社では全国から問い合わせを受けている。アテネットを使用した建設業者は、立会に伴う作業の手待ちが減り、効率が上がったと評価している。 


■通信サービスエリア外に通信網構築 現場内に中継器設置  

 遠隔臨場やICT施工には通信環境が必須となり、携帯電話の通信回線のサービスエリア外では活用することができない。トンネル、ビルの地下部分や高層階の工事現場では、電波が隔離されサービスエリア外となる場合がある。中山間地域でも、通信環境が不十分な箇所がある。 

 

 通信環境が整っていない現場では、LANケーブルを張り巡らせて通信環境を整備する。しかし、LANケーブルの設置などには、コストと長期の工事日数を要することが課題となっている。  


 通信環境の課題に対して、同社では中継器による通信網の構築について検証を進めている。  


 現場事務所に通信環境を整備し、中継器を設置。現場事務所の中継器から、現場内の中継器、車載中継器やドローンで空中に吊るした中継器同士に接続することで、通信網を構築する。現場内にLANケーブルを張り巡らせる方法より、安価で工事日数も短い。  


 同社では、平地での検証を既に行っており、今後は中山間地域での中継器の通信範囲などを検証していく。  同社の徳富代表取締役は「県内でも中山間地域で通信が弱いエリアがあり、ニーズがある。中山間地域での災害時における通信手段にもなる」と中継器による通信網構築の需要について話した。


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