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【企業の技術紹介】世界発の技術 タブレットなどで高精度測量 /松尾建設㈱・㈱オプティム

―業界の課題解決に期待―

2021年01月04日(月)

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 タブレット端末などで高精度な三次元測量が可能なアプリケーション「OPTiM Land Scan(以下、ランドスキャン)」を松尾建設㈱と㈱オプティムが共同開発した。測量時間の短縮や人件費の削減に寄与し、さらに人手不足・技術者不足といった建設業が抱える課題の解決に大きく貢献することが期待されている。

 

◆事前準備不要。タブレットなどとGNSSレシーバーだけで3次元データを生成  

 ランドスキャンは、LiDARセンサーが搭載されているタブレットなどのスマートデバイスを測量対象にかざすだけで3次元データを生成するアプリケーションで、①着工前測量②中間出来高測量③出来形測量―での使用を目的としている。 

 

 必要な機材はスマートデバイスとGNSSレシーバー1基のみ。GNSSレシーバーと連動して標定点4カ所と検証点1カ所を設定、撮影し、即座に写真④のようなメッシュデータを作り出す。基準点測量などの事前準備が不要なうえに、一人で作業ができる。しかも測量経験のない作業員でも高精度な測量を最大6割削減という短時間(※)で行うことができる。 ※800平方㍍の現場を想定、㈱オプティムにて計算した結果に基づく


◆中小規模現場のICT土工を実現  

 これまでドローンやレーザースキャナを用いて測量するICT施工のほとんどは大規模な工事現場で実施されてきた。しかしそうした大がかりなものはごくわずかで、現状は中小規模の工事が全体の97%を占めている。「中小規模工事の効率化・省力化こそが鍵」と考え、ランドスキャンの開発は進められてきた。 

 

 ドローンやレーザースキャナでの測量は、住宅地や街中の現場に不向きなうえに、作業員には経験と技術が求められる。一人で手軽に測量し、3次元データをつくれるランドスキャンは中小規模の工事現場での使用に優れている。効率化・省力化することで、人手不足、技術者不足を解消。これまでと同じマンパワーでより多くの作業、より多くの工事をこなすことができるようになる。また、ICT土工を前提とした施工計画の策定や、3次元設計図などの3次元データの生成、納品が可能となり、今まで実現できなかった中小規模の現場においてもICT土工を可能にする。


◆佐賀発・世界初の技術  

 ㈱オプティムは、「ネットを空気に変える」をコンセプトに、IoTプラットフォームサービス、リモートマネジメントサービス、サポートサービスなどを提供している。これまでも農業や製造業、医療などさまざま分野と連携して新しいサービスや技術を開発してきた。  


 松尾建設㈱土木工事本部の高田弘樹氏は、2019年5月から㈱オプティムに常駐。これまで培ってきた知識と経験を基に、ランドスキャンの開発に携わってきた。 高田氏に話を聞いた。 


―ランドスキャン誕生の経緯について教えてください。  

高田氏 「まずは建設業の生産性が向上するものをつくりたいという思いがあった。社内外の方々に困りごとをヒアリングしてまわり、〈OB・OG技術者活用プラットフォーム〉と〈AIカメラでの現場安全管理システム〉、そして〈スマートデバイスを使った測量システム〉の3つをテーマに決めた。ランドスキャンの開発に着手したころは、ドローンでの写真測量が盛んになっていたが、ドローンを飛ばすには申請手続きの手間がかかる。それにドローンに不向きな狭い現場も多い。そこで、スマホで手軽に測量できないだろうかと考えたのがスタート。当初は動画を使った測量システムをつくっていたが、(2020年の)春ごろにLiDARセンサーを搭載したタブレットがリリースされてそちらに切り替えた。その結果、より良いアプリを作成することができた」 


―㈱オプティムとの共同作業について印象深いことは?  

高田氏 「IT業界の皆さんに建設業界の常識などを説明するのが大変だった。測量についても、どういう作業で、どんな種類の方法があり、どうして大変なのかといったことを伝えるのが難しかった」 


―ランドスキャンの今後について。  

高田氏 「ランドスキャン技術は、国土交通省の令和2年度建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクトに選定され、佐賀土木事務所発注・城内線函渠工現場で検証実施中。中小規模現場でもICT技術を使えるように改善を進めていきたい」 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 20年8月にランドスキャンの無償トライアル版の提供が開始された。10月に開催された㈱オプティムのオンラインイベントでも紹介され、その際にスマートフォン(iPhone12Pro)での実演も披露し、その利便性と機能の高さで国内外の視聴者を驚かせた。今後は測量のほかに国土交通省が発注する工事で遠隔臨場への応用も期待されている。


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