平尾健佐賀県県土整備部長に聞く /安全・安心と活力につながる社会資本整備
2021年01月04日(月)
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佐賀県の平尾健県土整備部長に新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公共事業、佐賀県に必要な社会資本整備などについて聞いた。平尾部長は「県内の分散した都市を繋ぐ広域幹線道路の整備は佐賀県の将来の発展のために大変重要な社会資本整備」と話し、着実に推進する必要性を示した。
―新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公共事業
今のところ、新型コロナウイルス感染症で現場の進捗に大きな影響が出ているということは聞いていない。ただ、全国的に言えることだが、コロナ禍の中では現場でもしっかりと感染防止対策をやってほしい。手洗い、打ち合わせ時のマスク着用、3密の回避など、建設業の新型コロナウイルス感染予防ガイドラインに基づく対策の周知、徹底をお願いしている。
建設業の経営者からは、社内で感染が発生すると会社を休業する必要があり、現場が止まる可能性もあることから、感染予防にしっかり取り組んでいると伺っている。
県としてもリモートによる打ち合わせや現場の立会などの取り組みを進めるなど、県職員、建設業、建設コンサルタント業の方々が感染予防の意識を強く持って、対策を継続していかなければならないと思っている。
―仕事を進める上で心がけていること
土木の技術職の道を選んだのは、「自分が携わった物がしっかりと形に残り、それが多くの人に使われ、役に立っていることに対する喜び、達成感」が理由だと思う。大学を卒業後、7年間、民間企業で現場を経験した。
その後、県庁に入り、若い頃は自分が発注した工事を受注者と一緒に汗を流して造り上げることに喜びを感じながら仕事をやっていた。民間企業での経験もあり、現場代理人と話すのも非常に楽しかった。
我々の仕事の目的は、道路を造ることではなく、造った道路が皆様方に使われ、利用者の利便性向上や安全安心、まちの発展に繋がること。今も若い職員と話す機会があると、目的意識をしっかりと持って、色々な仕事に携わってほしいと話している。
また、現場の苦労が分かるので、民間企業の立場も理解しながら仕事をしてきたつもりで、そこは自分の財産だと思っている。
―道路整備事業
佐賀県の人口密度は全国で16位と高く、東京などで話すと驚かれる。九州の中でも熊本市や宮崎市、鹿児島市などの県庁所在地と比べ、佐賀市の人口集中は低く、鳥栖市、唐津市、伊万里市など、小さな都市が分散していることが佐賀県の特色となっている。このため、分散した都市を繋ぐ広域幹線道路の整備は佐賀県の将来の発展のために重要な社会資本整備となる。
有明海沿岸道路については、県が施工している佐賀福富道路で嘉瀬南ICから芦刈南ICまで開通しており、芦刈南ICから福富IC間の工事が着実に進んでいる。福富ICまで完成すれば、福富鹿島道路の整備も推進する必要がある。鹿島市、太良町、長崎県諫早市の区間の地域高規格道路としての位置付けも国へしっかり要望していく。
国が直轄で整備している大川佐賀道路の福岡県区間でも2020年度に大野島ICが開通し、2022年度に諸富ICが開通する見通しで、福岡県と佐賀県が繋がることになる。
佐賀唐津道路については、未整備となっている多久市と佐賀市の区間のうち、国で事業を行っている多久佐賀道路(Ⅰ期)について、設計や調査が進められていると聞いている。また、県で事業を行う佐賀道路については、2020年6月に着工式を終え、本格的な工事を進めている。また、唐津相知間についても未整備となっており、早期事業化について国へしっかり要望していく。
西九州自動車道も伊万里市内で整備が進められている。
国道498号については、これまで伊万里側から整備を進めてきたところであり、現在、国道34号付近の整備とあわせ、鹿島武雄間についても整備に向け検討を進めているところである。
幹線道路整備については、今後も着実に進めていく必要がある。
また、県民の方々が日常的に利用する道路整備もまだまだ整備すべき箇所が多いことから、歩道整備を含め、身近な暮らしに必要な道路整備もしっかりと進めていきたい。
―河川整備、治水対策
近年、災害は激甚化、頻発化しており、佐賀県では2018年から3年連続で大雨特別警報が発表され、昨年は鹿島市や太良町で多くの被害が発生した。一昨年も武雄市や大町町などをはじめとして県内各地で大きな被害が出た。特に被害が大きかった六角川水系では国土交通省と佐賀県が河川激甚災害対策特別緊急事業として緊急的に治水対策を実施している。このような状況を見ると、河川関係の整備や砂防事業などの治水対策を着実に進める必要性を強く感じる。
ここ数年、治水対策がクローズアップされているが、ハード整備だけでは対応できない部分も出てきているので、ソフト的な対策として河川の水位計やカメラの情報をリアルタイムで県民の方々に提供し、防災意識の向上や速やかな避難行動に繋げてもらうことも重要になってくる。また氾濫域も含めて一つの流域として捉え、その河川流域全体のあらゆる関係者が協働し、水害を軽減させる「流域治水」の取組を進めていきたい。
―公園整備、既存施設の老朽化対策
最近、コロナ禍の中で佐賀県では「オープンエア佐賀」を施策の一つとして発信しており、多くの県民や県外の方に利用してもらうため、吉野ヶ里歴史公園をはじめ、佐賀城公園、森林公園の整備を推進していく。また、既存の橋やダム、排水機場など様々な施設の維持管理や更新についても、長寿命化計画に基づき着実に実施していきたい。
―県内公共事業の予算確保
3カ年の国土強靭化緊急対策に続き、2021年度からは、5カ年の新たな国土強靭化加速化対策が閣議決定された。安全・安心の確保など、今後もしっかりと県内公共事業の予算確保に努めていきたい。
―地域の建設業
建設業は社会資本整備や維持管理、災害時の防災、復旧活動を担い、地域経済や雇用の下支えなど重要な産業と認識している。県内には小さな都市が分散しているので、それぞれの地域に技術と経営に優れた建設業者が存在することは非常に重要だと思っている。
ただ、そうした中で担い手の確保が業界の課題となっているので、県としても担い手の育成、確保のため、建設業界と協力しながら、建設業のイメージアップや県内建設業への就職を促す取り組みを行っている。県内の高校生に建設業の魅力を発信し、建設業界に就職する若者が増えるように取り組みたい。